人情にホロリ「隠し金の絵図 風車の浜吉・捕物綴」

「風車の浜吉」シリーズの、第二弾です。伊藤桂一先生著。

訳あって、かつて五年、江戸を離れていた御用聞きの浜吉。

馴染みの根津に戻り、風車を売りながら、目明かし稼業を再開しました。

頼もしい子分の留造に銀、良い仲間や上司にも恵まれて、腕利き親分の力を発揮する浜吉。

五年間の放浪で得た、知識や技能も大いに事件解決に役立っています。

短編集で、表題作はかつての盗賊に絡む謎解きです。

浜吉の元に届いた手紙は、かつて活躍した盗賊・つばくろの遺言状。

悪徳商人から盗んだ金を、貧しい者に撒いた義賊・つばくろは、正体も何も謎のままに、姿を消しました。その正体は、なんと浜吉が助けた子供の父親

そのお礼に、死ぬ間際にお宝の在りかを、手紙で浜吉に知らせたのです。しかし一筋縄ではいかず、宝の地図は暗号仕立て。

謎を解かねば、お宝は行方知れずのままです。浜吉と仲間が知恵を絞り、お宝探しに奔走します。

殺しもなく、穏やかな読後感の一作。娘を助けられたことがキッカケで、盗みを止めたつばくろ。自分が追う相手の身内とは知らずに、子供を助けた浜吉。

人情がいつの間にか、人を動かしている……浜吉達の人柄もあり、安心して読める捕物帖です。「金の欲しい気持ちは、泥棒も役人も同じ」という述懐にも考えさせられます。

 

堀江貴文さんの著書『本音で生きる』が後押ししてくれる

いつも話題となる堀江貴文さんの本ですが、タイトルに惹かれて読んだのが『本音で生きる』(SB新書)です。著者には、変わりゆく時代の寵児ともいえる面もあって、新しい時代の生き方の参考になります。

この本音で生きるというのも、これまでの社会では本音と建前を使い分けてきた風潮があったことからすると小気味いい生き方だと思います。言いたいことを言ったり、他人のことを気にしないというあり方を心のどこかでずっと望んでいたからかもしれません。

もはや確かなもののない時代になり、自分まで不確かなものにしないために、決して他に振り回されないという主張が印象的な一冊でした。そのための考え方や人間関係・時間の使い方について書かれているのですが、基本は言い訳をしないで自分のやりたいことをすぐにやる、ということにつきるようです。

実際に、堀江さんのアドバイスで、猫ひろしさんがカンボジア国籍をとり、オリンピックのマラソンの代表になって出場を果たしたというエピソードは面白かったです。本に書かれているノリのよさでチャンスをつかむというのも今はよくわかります。今の時代の変化についていくには、長期的なビジョンより、その時々ですぐ行動するのが大切なのですね。

本音で生きられない理由が「自意識」と「プライド」にあるというのも納得できます。本書では、これからのビジネスの基本的な考え方にも触れられていて、いろいろ試してみようと思っています。

猫好きなら絶対読むべき!旅猫リポート

これは、悟という青年が、飼い猫のナナの新しい飼い主を捜すために、古くからの友人たちを訪ねて行くというお話です。

ただ、ナナのことが本当に大好きな悟が、新しい飼い主を探さなければならないという時点で、物語の結末は大体予想できてしまいます。

でも、そんなことでは、この物語の魅力は失われません。

この話は、ナナと登場人物の目線で話が進んでいくのですが、面白いことに、最もよく出てくるはずの、悟の目線で書かれている箇所はありません。

小学校、中学校、高校のそれぞれの友人と、叔母の目線で、当時の悟とのエピソードが書かれているのですが、この悟がとにかくいい人。

それが、それぞれの友人目線で書かれる当時のエピソードを通して伝わってきます。

悟の言動は、相手の心に重くのしかかっているようなことを、ふっと軽くしてくれるのです。

猫好きにお勧めしたい理由は、ナナ目線で書かれる箇所にあります。

ナナ目線で書かれる文章を読むと、つい、有川先生は、猫の気持ちが本当にわかるのかもしれないと思ってしまいます。

ナナの態度はまさにツンデレ

素直じゃないのに、悟のことが大好きだとバレバレで、本当に可愛いです。

猫を飼っている方は、自分も飼い猫にこんなふうに思われたいと思うのではないでしょうか。

特にラストはずるいです。

結局、引き取り手が見つからず、叔母の法子のところに一緒に行くことになるのですが、ここから、最初に予想できてしまった物語の結末が確信に変わります。

悟の運命を知った時の、ナナの取った行動が泣けます。

悲しいのに心温まる、そんな一冊です。

文春文庫の司馬遼太郎著の竜馬がゆく全8巻

坂本龍馬の人生を描いた全8巻の長編小説です。

江戸から明治に時代が移ろうとする社会の潮流のなかで、坂本龍馬を中心とした様々な人々の今までの価値観世界観から脱却し、新しい世界を切り開こうとした人々の葛藤や衝突、それにまつわる人間模様が描かれ、人間味をあちこちに感じる小説です。

坂本龍馬のバカにされた少年時代、それを包み込む母親の優しさと親子の信頼感は今の時代とは違った形とはいえ、本質的には変わらない母の愛情を感じます。

龍馬はバカにされながらも人を嫌いになることはなく、人に寄り添いながら、必死でもがき苦しみながら、自分が何をなすべきかを自分に問い続けたことが想像でき、本来、人が生きていく本質がそこに見え隠れし、その中にも、滑稽な行動も多々見受けられ、人間性あふれる言動が生き生きと描かれています。

青年期に入り、今では維新の志士の代表格として論じられている龍馬が頭角を現し、それまでの日本にはなかった価値観を具現化するために奔走する姿には、今の時代で言えば、ITの普及による社会の変革を先導してきた様々な技術者の方々や経営者のような方達とダブりました。

龍馬の当時としては理解され難い価値観に対して他人が冷ややかにバカにしても、「人はなんともいわば言え、我なすことは我のみぞ知る」と手記に残している通り、自分を戒め納得させていたことにもなんとも人間性を感じます。

自分の信じた道をがむしゃらに生きた一人の人間の人生模様に感銘を受けるとともに、今生きていたら今の日本をどう思うのだろうと想像してしまいます。

墓地を見おろす家 は寝る前に読んではいけない

小池真理子さんの墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)を寝る前につい読んでしまいました。

小池さんの本は、面白いので途中でやめられないことは、わかっていたんです。でも、たまたま枕元にあり、たまたま手にしてしまいました。

内容は、日当たり良好、商店街も近いいうことなしのマンションをみつけた若い夫婦の話なんですが、ただひとつこのマンションには欠点があった。それは…。という話なんですが、欠点とは、墓と火葬場に隣接していたから、なんです。

お墓の隣のマンションなんて、ふつう敬遠しますよね。でも、この若夫婦はそこはえいっと飛び越えて買ってしまったのです。

そうしたら夜な夜な起こる怖い現象。わたしはとても怖がりで、夜にひとりでトイレにいけないので、この小説は昼に読むべきだったと、少し読んだら悟りました。

しかし、やめられない。ついつい、ページをめくってしまいます。

推理小説は、謎解きが面白くて一気に読んでしまいたい。この本を読んだときも、そうなってしまって、やめられませんでした。

ラストのガラス窓に手がペタペタたくさんついたシーンは、最高に恐怖でした。

しかしこの小説は、アマゾンでは酷評されています。たしかに、小池さんの小説は、ラストが拍子抜けしてしまいます。

ムラのある小説をかく人なんです。読後感は恐怖だけでした。

葉桜の季節に君を想うということ 綺麗な題名の驚くべきどんでん返し

「葉桜の季節に君を想うということ」

という題名からはとても想像の出来ない内容と、ラストのあまりの衝撃に思わず笑ってしまいます。

まずこのなんとも透明感溢れる題名では想像できない最初のシーンは女漁りをする主人公、成瀬将虎現在から始まります。

まずこの導入部分からすでに読者はまんまと作者のトリックに騙されて入るのですが、それに気付くことなく物語は進みます。

主人公はなんでもやってやろう屋を自称し毎日を過ごしています。

ある日たまたま駅のホームで自殺をしようとしていたさくらを助けたことからこの物語は始まります。

後輩の頼みで始めた悪徳商法の蓬莱俱楽部の調査の描写を中心に、どこかつながっていそうで、でも関係のなさそうな主人公が19歳の頃の探偵事務所で働いていた話、2年前に起きた安さんの娘探しの話、さくらとの日々が次々に綴られて行きます。

その全てが混ざり合って最後にたどり着いた事実は、登場人物全てが〇〇だったという衝撃です。

きれいに騙されていた私は作者の思惑通りの設定で物語を読み進め、最後のネタバラシ前からえ?どういうこと??の連続でページをめくる手はとまらず、気がつけば最後の衝撃に思わず笑い、そしてまたすぐに最初から読み直しました。

叙述トリックの代表的な作品で読んだあとの爽快感とすっかり騙された、やられた!と気持ちよく言えるおすすめの作品です。

ペンギンハイウェイを読んで

「昨日の僕より、今日の僕の方が賢い。」これがペンギンハイウェイの主人公の口癖です。

この本は、勉強が大好きだけど気弱でいじめられっ子の主人公の少年と、主人公の少年を、優しく見守る歯科助手のお姉さんが、街に突然現れたペンギンの謎を解いていく、ファンタジーな物語です。

実はこのペンギンは、歯科助手のお姉さんが出しているのです。

少年は、お姉さんの手によってペンギンが作り出されるところを見たのですが、逃げ出さず、次の日から原因を探すために、たくさんのことを考えます。

時には山に登り街を見渡し、時には図書館で本を読み、最後まで諦めず、少しずつ答えに近づいていきます。

その答えは少年にとって、とても悲しいものでしたが、少年はその現実を真摯に受け止め、未来に希望を持ち、また賢くなるために勉強をし続けます。

私はこの本を読んで、どんな困難な課題にも諦めずにひたすら取り組むことの大切さ、自分にとって辛いことが起きたとしても、現実を見ること、さらに、未来への希望は捨てないことの大切さを学びました。

未来は自分の力で必ず変えることができる、未来を輝かしいものにするため、日々の努力を怠ってはいけないと、読み終わった後、強く感じました。

タイトルからは想像ができないくらい、切なくも、心温まる物語でした。

これから、心が折れそうになり、諦めそうになったとき、この少年は、私の努力するための原動力となり、私を支えてくれるだろうなと強く感じています。