文春文庫の司馬遼太郎著の竜馬がゆく全8巻

坂本龍馬の人生を描いた全8巻の長編小説です。

江戸から明治に時代が移ろうとする社会の潮流のなかで、坂本龍馬を中心とした様々な人々の今までの価値観世界観から脱却し、新しい世界を切り開こうとした人々の葛藤や衝突、それにまつわる人間模様が描かれ、人間味をあちこちに感じる小説です。

坂本龍馬のバカにされた少年時代、それを包み込む母親の優しさと親子の信頼感は今の時代とは違った形とはいえ、本質的には変わらない母の愛情を感じます。

龍馬はバカにされながらも人を嫌いになることはなく、人に寄り添いながら、必死でもがき苦しみながら、自分が何をなすべきかを自分に問い続けたことが想像でき、本来、人が生きていく本質がそこに見え隠れし、その中にも、滑稽な行動も多々見受けられ、人間性あふれる言動が生き生きと描かれています。

青年期に入り、今では維新の志士の代表格として論じられている龍馬が頭角を現し、それまでの日本にはなかった価値観を具現化するために奔走する姿には、今の時代で言えば、ITの普及による社会の変革を先導してきた様々な技術者の方々や経営者のような方達とダブりました。

龍馬の当時としては理解され難い価値観に対して他人が冷ややかにバカにしても、「人はなんともいわば言え、我なすことは我のみぞ知る」と手記に残している通り、自分を戒め納得させていたことにもなんとも人間性を感じます。

自分の信じた道をがむしゃらに生きた一人の人間の人生模様に感銘を受けるとともに、今生きていたら今の日本をどう思うのだろうと想像してしまいます。