「人間椅子」未だ新鮮な古典作品

大正14年の雑誌に掲載された江戸川乱歩の有名なミステリー小説です。

人気女流作家の佳子は、官庁に勤める夫とそれなりに裕福な暮らしの中。平和に暮らしていた。夫を仕事に送り出し、自分あてのファンレターに目を通すのが日課になっていた佳子はファンレターの束の中に分厚く大きな封筒が混じっている事に気づく。

それを開封すると中から原稿用紙の束が出て来た。ファンが自作の小説でも送ってきたのかと思った佳子はその小説を読み始める。

しかしそれは小説と呼ぶには奇妙な、妙に現実味を帯びた『私』という人物の独白文だった。『私』は椅子職人であり、ある日出来心から自作の椅子の中に生活物資を持ち込みその椅子と共にホテルのロビーへと搬入される。そして、昼は椅子として。夜はホテル内で盗みを働きながら生活をする様になる。いつしか、『私』は自分の椅子に女性が座るという現象に興奮を覚える様になっていく。という内容だった。

やがて、佳子は更に読み進める内に『ある疑惑』におののく事になるのだが…。

古典作品と呼べる程、古い作品のはずなのに全然古さを感じさせません。

初登場からほぼ100年経っているにも関わらず、その内容は現代の人間から見てもゾッっとするその感覚は新鮮なまま。

むしろ、斬新にすらうつります。

また、ホラーなのかミステリーなのか読む人によって受け取り方が違うのも面白い所。

果たして、佳子はどうなるのか。本当に『私』は実在する人物なのか。それとも、誰かの悪戯か。

そう考えるとなんとなく答えが見えそうで見えない所も、この作品の面白さを担っている気がします。

「でも古い作品だしな」「難しそう」と距離を置かず、まずは手に取って数ページ読んでみて下さい。きっと、佳子と同じ様に『私』の独白に夢中になるはずです。